その用途から推測するに、「内容物がはみ出ないように抑えて包むもの」といった意味合いの暗喩として、クラシックチュチュの股間部分にこの名称を当てたのだろう。実際、チュチュと一体となったこの部分はレオタードの同じ位置の領域同様に、バレエタイツやその下のインナーがずれないように抑える役割を果たしている。
その構造上、色合いや修飾によっては下着のように視えるのも事実だが、解釈は観る側にゆだねられている。ただ、スカートの裾が跳ね上がっているクラシックチュチュにおいては、ダンサーの動きによってこのツンが露出するのは必然で、その視覚上の効果は自明である。
大きく脚を広げる動作や、跳躍、回転などの動きにおいて、チュチュの下からかいま見えるツンのありさまはバレリーナと振付の共謀の結果生じた連続技的なパンチラであり、観る者の性的な欲望をそそるためのエフェクトとして機能していることは疑いようがない。
バレエ王子と一緒に踊るパ・ド・ドゥでは王子に身体を支えてもらっているのでゆっくりとした動き(アダージォ)が可能になるため、風情ある股間の変化を演出することもできる。
つま先を伸ばして片脚立ちしたバレリーナの身体を王子が支えながら独楽のようにゆっくりと回すプロムナードという動きでは、大きく拡げられた股間を観客にまんべんなくあらゆる角度で見せつけられることになる。
踊り手によってはきわめて細い幅のツンを穿いている場合もあり、そうした場合、大きく脚を開くと大陰唇の両脇のふくらみがはみ出て独特の陰影が見えてしまうといった事案も発生する。
ツンの下にバレエタイツ、その下に専用のインナーを穿くというのが一般的だが、ツンが細幅だとインナーがはみ出て透けて見える危険性もあるため、タイツを直穿きしているケースも有るらしい。また同様にはみ出しを防ぐため、ツンにタイツを縫い付けるなどの工夫も行われている。
衣裳全体に色のついたチュチュの場合にはツンも同じ色になってしまっている場合があるが、白いスカートをパニエ風に下に重ねたり、ツンの部分だけをあえて白くして、いかにも下着らしい風情を醸し出す演出もしばしば見られる。
いずれにしても、ツンがバレリーナにおける性的魅力を集約するいわばレンズの焦点のごとく機能し、快感の「核」を形成している部分であることは間違いない。そして、この「核」を観衆に対して露わにすることによる愉悦がバレリーナ自身の心の奥底に秘められている可能性も(妄想をたくましくする上で)重要であると言えよう。
※ バレエの衣裳以外でも、アンダースコートの一種として機能する衣裳の一部分を備えているケースはある。例えばセーラームーンのキャラクター衣裳のツンはその視覚上の効果はバレリーナの場合と同様であると考えられる。